和紙の現場を訪ねる 第5回
第5回
作家・横山明子(ヨコヤマメイコ)さん
横山明子(ヨコヤマメイコ)さんは、イタリア・フィレンツェで、土佐典具帖紙を主に使ったルネッサンススタイルのちぎり絵を制作されています。「Washi-Arteワシアルテ」というのは、和紙独自の透過性を生かして光をあてると隠れた絵が現れるという世界に一つの「光る和紙の絵(Washi-Arte)」です。
今回は、横山さんに和紙の魅力や作品についてお話をお聞きしました。
どんなお仕事をされていますか?
普段はフィレンツェの観光ガイドでウフィツィ美術館やアカデミア美術館などを日本人の観光客の方々に案内したり、フィレンツェの文化交流事業などの 通訳アシスタントなどをしています。そして「Washi-Arteワシアルテ」の作品を制作しています。
この活動を始めたきっかけは?
イタリア・ルネサンス美術に憧れて高知大学を卒業した後、フィレンツェのアカデミア美術学院に留学しました。世界中から美術を勉強しに来た留学生たちに囲まれて制作していた時期に、日本人としてのアイデンティティーみたいなものを考えるようになりました。その時に「和紙」という素材を作品に取り入れる様になり、独自のアイデアを加えながらルネサンススタイルのちぎり絵〜光るちぎり絵〜変容するちぎり絵という風に発展させていきました。
そして昨年この技法に「Washi-Arteワシアルテ」という名前をつけました。
今後どのような活動をしていきたいですか?
フィレンツェで和紙を使った作品を制作していて、和紙に対する関心が高くなっているのを感じる事が多くなりました。
こちらイタリアでは和紙を「carta di riso (米の紙)」と呼びます。米のイメージが日本を彷彿させる事からこの名前がついた様です。
ウフィツィ美術館のレオナルドやミケランジェロといった巨匠たちの芸術作品を修復している修復士たちから和紙を修復に使っているという話を聞いた事があり、郷土の土佐和紙の話をしてあげるととても感動されたのを覚えています。
私の今後の目標は、和紙という素材を芸術分野の新しい新素材(水彩や油絵の具の様な)として海外で紹介していくことです。そして和紙だからこそ表現できる世界を開拓していけたらと考えています。
この活動で一番やりがいを感じるのはどんな時ですか?
作品を見た日本人やイタリア人の方に「こんな作品初めて見た」と言われた時に、自分は新しい表現方法を確立出来たと実感します。
自分の作品を通して、これからもイタリアや日本の方々に新しい和紙の世界を紹介していきたいと思っています。
また、一番大変だと感じるのはどんな時ですか?
このWashi-Arteの制作技法にはいろいろ試行錯誤を繰り返していきながら発展させてきました。 特にその中で作品を光らせるライトボックスの制作には非常に苦労しました。
照明素材を蛍光灯から電球、LEDへと発展させていったり、作品展の度に配線を考えて作品をセッティングするのに大変時間がかかります。
土佐和紙の魅力や使い方について教えてください。
私の作品は、厚めの土佐楮和紙、ミツマタ和紙などの下地の上に染めてある薄い典具帖紙を貼り重ねて、風が吹くとなびく髪の毛や、肌がうっすらと透けて見える衣装など透明感を持ちつつも、柔らかく立体感のある人物画に仕上げています。
和紙の柔らかく、軽くてうっすらと透ける特性が通常の絵の具にはない和紙ならではの魅力だと考えています。
土佐和紙の産地として取り組むべきことは何でしょうか?
現在 西洋で紙が照明器具や障子を模した様な衝立など生活用品の中に取り入れられ、注目されつつあります。
それに反して、日本人の生活からは和紙が消えてきている様に思えます。
もっと郷土の人たちには地元の和紙を生活に取り入れてほしいと思います。使える和紙、和紙のある生活をアピールしてもらい、それを「美しい和紙と共存する日本人の生活」として、これからイタリアで作品とともに紹介していけたらと思います。
横山 明子
イタリア・フィレンツェ在住
tel.(39)3485832241
メールアドレス: meikoyokoyama.washiarte@gmail.com
http://meikoyokoyama.com
Facebook: https://www.facebook.com/WashiarteMeikoYokoyama/