出会う《和紙の現場》

和紙の現場を訪ねる 第3回

第3回

草流舎•田村雅昭さん

草流舎

12月18日(木)から本館にて始まった「~土佐和紙と土佐漆喰の出合いから~ 田村雅昭と草流舎のしごと」展は、いの町で土佐和紙や土佐漆喰などを使った張り子やオブジェを制作・販売されている草流舎さんの展覧会です。
手漉き楮紙や雁皮紙を8回も張り重ねて作るという張り子は、干支や土佐の童謡などをモチーフに作られ、その愛らしい表情とフォルムにはついついぐっと引込まれます。また、和紙と漆喰で作られた様々なオブジェは、その独創的で自由なアイディアに驚かされます。今回は、そんな枠にとらわれず自由に制作・活動されている草流舎・田村雅昭さんにお話を伺いました。

どんなお仕事をされていますか?

最近では張り子の郷土人形が取り上げられることが多いですが、もともとは、和紙や漆喰など昔からあるものを今にするという意識でいろんなものを作っています。例えば、和紙を使った照明や禅寺の障子紙などの内装的なもののほか、漆喰と和紙を組み合わせたフレームやオブジェなどを制作しています。

張り子に関しては、私が最初に作った原型をもとに紙を張っていくのですが、紙を張る作業はいの町、高知市、土佐市などのいろんな人にお願いをして作業してもらっています。その後私が決めた模様を家内や私で絵付けをして、いわば家内制手工業のような流れで出来上がります。この張り子に紙を張る作業は、もう10年近くお手伝いさんたちにお願いしているのですが、その方達から教えられて改良してきたところもたくさんあります。例えば、この紙が良いとか、紙はもう一枚張った方が良いとか…、そういう声をもとに、当初一番始めの下張りには新聞紙を使っていましたが、違う紙に変えました。そういうことの積み重ねで、今の草流舎の張り子があります。
今回のいの町紙の博物館での展覧会名を「田村雅昭と草流舎のしごと」展としたのは、そういった関わっていただいている人達も含めた仕事としてお見せできればと思ったからです。

草流舎

来年の干支の羊の張り子。張り子にはすべて、羽根つきの軸にも使われる「無患子(むくろじ)」という木の実を入れ、みんなが元気で健やかに過ごせるようにと無病息災の願いを込めています。

 

このお仕事を始めたきっかけは?

いろんな仕事を転々としてきましたが、今は自分でできることをやっています。自由でいたいと思っていますが、それは才能のある人ができることで、無能無才の私なんかにとっては地獄ですね。地獄のいばら道を只今、邁進中です(笑)。
でも、ある意味人と違う道なので良い面もありますね。例えば、今の人って空を見る時間もないでしょう?私なんかは仕事も忙しくないし、お金もないし、そういう時間が豊富にあるから(笑)、自然にそういった時間が作れるのでそれは良かったですね。

 

今後どのようなお仕事をしていきたいですか?

なるようにしかならないと思っていますが、これからも一緒に作ってくれる仲間とともに仕事をしながら、「昔を今にする」ということを続けていきたいと思います。
「昔を今にする」という言葉は、私が大好きな先生(故・杉原勇三氏)が言われた言葉なんですが、そのポリシーをもとに、昔の精神や昔からあるものを今の時代に生かす、ということができればと思っています。

土佐和紙の魅力や使い方について教えてください。

今回の展覧会では、そういった土佐和紙の使い方や魅力を提示できればという思いもあって、張り子だけでなく、薄い雁皮紙に裏から漆喰絵の具を使って絵を描いたものや、インクジェットプリンターで写真を印刷したものを漆喰のフレームに入れて展示しています。特に写真は、雁皮紙に印刷する事でインクジェットでも写真とはまた違った柔らかい独特の雰囲気に仕上がります。インクジェット?と思われるかもしれないですが、やってみると案外面白い仕上がりになるんです。古い性能の悪いインクジェットプリンターでも十分(笑)。そうやって決まりきった使い方でなく、既成概念にとらわれずに自由に素材を使ったり、ものを作ったりする事で、実は面白いものができあがってきたりするんです。それは土佐和紙だけでなく漆喰などの素材でもそう。私が使っている漆喰絵の具(漆喰に顔料を混ぜたもの)もそういう自由な発想から生まれました。

もっと使い手が自由に使ったり作ったりすれば、まだまだ面白いものができるし、そういった中から新しい使い道や魅力が生まれてくるんではないでしょうか。

田村さんの自由な発想から生まれるしごとの数々を、ぜひ実際に会場でご覧になってみてください。


草流舎

高知県吾川郡いの町3811
tel&fax.088-892-1045
open.10時~17時 水休
http://www.h2.dion.ne.jp/~souryuu/

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