和紙の現場を訪ねる 第11回
第11回
手漉き和紙職人・工芸家 田村晴彦さん
土佐和紙職人で、染めを手がける田村晴彦さん。和紙原料を使った半立体のアート作品を長年制作してきました。
本館にて開催中の田村晴彦和紙工芸展は初の大規模展です。
高知県展や関東の公募展での受賞作を中心に、初期から円熟した作品まで、約15点を一堂に展示しています。
どんなお仕事をされていますか?
手漉き和紙と染めの仕事をしています。
そのなかで、数々の師との出会いに恵まれ、和紙アートを創ってきました。
なぜ創作活動を始めたのですか?
山歩きや草花が好きだったので、18歳で近所の先生にお花を習ったのが始まりです。
20代はじめに高知市で草月流の免状を習得し、先生のご主人である山六郎先生にも美術の分野で師事しました。20代の早い時期から県展へたびたび出品することができたのも、先生のアドバイズのおかげです。
また、染色家の北村文和先生にも師事し、紙を染める技法を学ばせていただき、染めは後に私らしい仕事の柱となりました。
30代からは紙の仕事に全力投球していましたが、子育ても終え、還暦を機に再び創作を始めました。
田村さんにとって創作はどのようなものですか?
創作の時間は遊び心をもって臨み、ふっと息を抜く、かけがえのない時間です。幸い、紙漉き場や倉庫など、仕事柄広い空間があるので、時間を掛けて大きな作品を創ることができます。ひとつの作品に1ヶ月以上かけて取り組みます。特に県展への出品は真夏の暑さと戦いながら創作しています。
土佐和紙の魅力や使い方について教えてください。
若い頃は原色を好んで使っていましたが、年齢を重ねるうちにだんだんと穏やかな色を重ねるようになり、その重ねた中から引く作業もできるようになったと思います。染めた紙原料を使って、紙漉き用のネリ(糊)でくっつけていくので、濡らしてはがすと引き算ができます。
高知県は紙の原料植物の産地で、この原料が手元にあるからこそ、作品にアレンジしたいと思いました。
田村 晴彦
手漉き和紙製造・染色(美術紙)
高知県手漉き和紙協同組合所属