出会う《和紙の現場》

和紙の現場を訪ねる 第14回

第14回

版画家・徳廣秀光さん

徳廣秀光

緻密な表現で独特な版画世界を表現する徳廣秀光さん。
この表現は版画の木口木版(こぐちもくはん)の技法によるものであり、第11回高知国際版画トリエンナーレ展でも見事「土佐和紙賞」を受賞されました。 高知版画協会の会長も務められた徳廣さんに土佐和紙と版画についてお聞きしました。

木口木版とは何ですか?

一般的な木版の技法は「板目木版」がありますが、これは一本の樹木から縦に切り出した木材を使います。それに対して「木口木版」は、一本の樹を横に輪切りにした状態(木口)の中央部を版材として使い、ビュランという刀で削ります。木目がつんで堅いので、繊細でシャープな表現に適しています。
また、とても緻密な作業なのでルーペで作業します。高知県内でも私以外でやっている人はとても少ないです。

徳廣秀光

左:第10回 入選 「Syndrome Ⅱ」 木口木版、コラージュ、ステンシル、手彩色 縦78×横53cm
右:第11回 土佐和紙賞 「シンドロームⅩ 閉ざされた世界(Ⅱ)」 木口木版 縦65×横53cm

 

版画をはじめられたきっかけは何ですか?

板目木版は50年ほどやっていますが、木口木版は30年ほどです。当時、木口木版の第一人者であった日和崎尊夫(1941~1992)さんの作品を目撃し、衝撃を受けました。そこから日和崎さんに師事し、技術を継承しました。

徳廣秀光

左:第8回 入選 「Requiem Ⅰ-B 届かぬ願い」 木口木版、板目木版 縦54×横54cm
右:第9回 佳作賞 「ビジュアルパニック」 木口木版、ステンシル サイズ不明

 

土佐和紙と版画の相性はどうですか?

土佐和紙は種類が多いので選択肢が多く、表現に最適な紙を選ぶことが出来ます。木口木版の表現にはきめの細かい紙が向いているので、主に四国わがみ株式会社さんの雁皮紙を使用しています。

今後どのような活動をしていきたいですか?

最近は版木と紙の調達が難しくなってきていますが、「土佐和紙」と「版画」というとても相性のいい文化が残っていますので、なんとか木口木版を含めた版画の魅力を次世代にも伝えていきたいと思います。

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